「メダカのビオトープでアクアポニックス」 ~ 水耕栽培でミニトマト作ってみよう ~
メダカを飼っているビオトープを利用して、「野菜でも育てられないかなぁー」と、以前より思っていたのですが、すっかり温かくなってきた今日この頃、一念発起して水耕栽培をやってみることにしました。
ここでいうビオトープは簡単に言うと自然環境を再現した水槽です。メダカの棲む川のように土や砂利を敷いて、水生植物を植え、川エビや貝類も同じ水槽で飼育します。
土や砂利に棲みついたバクテリアがメダカのフンを無害なものに分解し、それを植物が養分として吸収し植物プランクトンが誕生する。それをメダカやエビ、貝類が食べる。メダカが人生(魚生?)を終えると、エビや貝類、バクテリアがきれいにしてくれます。
水耕栽培は土地を使わずに水や液肥と酸素で植物を育てる栽培方法です。
メダカのビオトープには天から降り注ぐ太陽光と、給餌(きゅうじ)や生物のフンによってたくさんの栄養が溢れています。野菜を育てたら美味しく育ちそうじゃありませんか?
それにメダカと野菜の栽培が同時にできたら面白そうじゃないですか!!アクアポニックスと呼ばれているものですね!
(アクアポニックス=水耕栽培+水産養殖)
水耕栽培を行うにあたって注意点
まず、水耕栽培は「エアーポンプを使用した栽培方法」と、「エアーポンプを使用しない栽培方法」があります。
土耕栽培において、植物は土の中に張った根から養分と酸素を吸収して育ちます。水をやりすぎると根腐れするということを耳にしますが、これは水はけが悪いことで根が土の中にある酸素を吸収できずに活動を停止してしまうためです。
(水の中に溶け込んでいる溶存酸素だけでは酸素不足となる)
もちろん、根腐れの原因は酸素不足以外にも有害な土壌細菌の影響も考えられます。また、水生植物が根腐れしないのは低酸素耐性があったり、地上に出ている部分から根へ酸素を供給したりしているためだそうです。
本題に戻りますが、「エアーポンプを使用した栽培方法」はその名の通り、水中の溶存酸素量だけでは足りない酸素をエアーポンプを使って送ってあげる方法(エアレーション)です。(電気代がかかる、設備が必要)
では「エアーポンプを使用しない栽培方法」はというと、根を完全に水没させるのではなく、半分根っこを地上に出してあげる栽培方法なのです。
沈んだ根が水中の養分を吸収し、地上に出た残りの根が空気中の酸素を取り込みます。これで酸素不足による根腐れは解消されます。
必要物品
【用意するもの】
- ビオトープ(メダカのいる水槽)
- 栽培する植物(今回は種からではなく苗木を用意)
- プラスチック段ボール(植物を浮かすための土台)
- 園芸用支柱、固定する紐
- 不織布たわし(台所で使うポリエステルたわし)
- 必要に応じた工具類
プラスチック段ボール(以下、プラ段)はたまたま使用した残りがあったので流用しただけで、土台となるものは木製でも何でも良いと思います。
今回の水耕栽培は「エアーポンプを使用しない栽培方法」を選びました。
メダカってエアレーションがなくても風が吹いて水中に溶け込んだ酸素で元気に泳ぎ回りますからね。
自然界のメダカ達がまさにそうよね。
水量に対して多すぎるメダカがいる場合は酸素不足となるためエアレーションが必要となりますが、自然に近いビオトープを使った水耕栽培をするのなら、なるべくその利点を活かしたいですからね!
※メダカの個体数や水槽の容量に加え、植物の成長により沈水した根が消費する酸素量が増えることでメダカが酸素不足となる可能性があります。
制作開始
使用したビオトープは60Lサイズのジャンボタライでメダカ約60匹にミナミヌマエビ、タニシ、サカマキガイ、カワニナが共棲しています。底には赤玉土や砂利を敷き、水生植物はご覧のようなウォータークローバーと、水中に沈んで見えませんがアナカリスが入っています。
水が緑色なのは植物性プランクトンが豊富な証拠です。かといってどろどろとしたアオミドロは発生していません。
立ち上げてから約10か月経ちますが、足し水のみで一度も換水はしていません。たまに底に沈んだゴミを手動の排水ポンプで吸い出す程度です。苔(コケ)もメダカや貝、エビ達が食べてくれるため苔掃除の必要もありません。
今回水耕栽培するのは「べにすずめ」という品種のミニトマトです。手っ取り早く苗木から水耕栽培を開始することにしました。価格は250円(税抜き)程です。
私自身、トマトが好きかと問われれば「普通」と答えます。ならなんでトマトを選んだのか!と、突っ込まれそうですが、こども達がトマトが好きなことと、見た目の鮮やかさ、可愛さですかね。これからの時期、トマトは驚くほど実をつけます!
収穫した際の達成感もかなりありそうなので!
「鈴なり ごく甘」という言葉にも簡単に踊らされました。
べにすずめは糖度が高いトマトなんだってね。
土台の作成
まずはジャンボタライの縦の長さに合わせてプラ段をカットします。カッターを使用する時は力入れ過ぎて思わぬ怪我のないように注意が必要です。カット後は、四方にビニールテープを貼って尖った断面を触れても痛くないようにします。
赤で囲んだジャンボタライのふちに空いている穴に合わせてプラ段に電動ドリルで穴を開けます。べにすずめが育ってきたら園芸用の支柱を通して固定するためです。
次に、今度はホールソーを使って苗木を通す穴を開けます。
ホールソーで開ける穴のサイズは大きすぎても小さすぎても都合が悪いので直径26mmのものを使用しました。
<理由としては>
- 穴が大きすぎると苗木の固定が難しくなること
- 穴が小さすぎると苗木(根)が通らないこと、苗木と支柱を一緒に通すことができないこと
です。ミニトマトは昨年も庭で育てていましたが、このくらいの大きさの穴なら問題なく幹が育つだろうという目測ですので、栽培する植物の成長の仕方に合わせてあらかじめ開ける穴の大きさを決めておくと良いです。
土台の準備ができたら苗木の根を傷つけないように丁寧に洗います。購入時についていたポットの土はしっかりと洗い流しておきます。
不織布たわしに根が通るぐらいの十字の切り込みを入れ、べにすずめの苗木を通します。そしてプラ段に通すとこんな感じになります。(不織布たわしは必須ではありませんが、あれば品種名を書いたタグを差し込むことができます)
良い感じになってますね。ただ、これだけでは苗木がぐらついてしまうので、苗木を通した穴には園芸用支柱を通し、幹と支柱をほど良いところで紐を使って固定します。
今はまだ小さな苗木で幹も細いため細めの支柱を使いましたが、植物の成長に合わせて支柱の大きさも変えていく必要があります。
そして、先ほどジャンボタライに合わせて開けておいた穴に紐を通してプラ段とジャンボタライ(ビオトープ)を固定します。先ほど書きましたように、紐ではなく、園芸用支柱を通して固定することもできます。
が…、園芸用支柱が一本しかなかったため紐で固定しました。
実は、園芸用支柱を買い忘れていました…。
透明で光を通すプラ段ならビオトープに自然に溶け込んで違和感がありません。耐候性も強度も問題なしです。
ちょっと見づらいですが、上の画像の左下に写っている灰色のパイプ(排水パイプ)の高さで排水されるため雨が降っても水かさはこれ以上増えることもありません。それは苗木の根が完全に水に浸からないということです。
では、「エアーポンプを使用しない栽培方法」の肝である、根が半分だけ浸かった状態を見てみましょう。
ドキドキ…。
ちょうど半分くらい根っこが浸かっています。浸水した根は底土に定着したバクテリアが分解したメダカのフンを養分として吸収しグングン成長します(予定)。これぞアクアポニックス(自己満足)。土耕栽培と違ってムカデやダンゴムシなどの虫もいません!!
メダカ達も根っこのそばで元気に遊泳していますね。
そして、地上に露出した根は空気中の酸素を取り込み、苗木全体に酸素を送り届けます。成長を遮る土がない「べにすずめ」は、常に養分を補給してくれる根と、常に酸素を供給してくれる根によって元気に成長し鈴なりに甘い実を実らせてくれることでしょう…。
最後に品種タグを差し込んで完成!!
まとめ
今回、屋外のビオトープを利用しての水耕栽培(アクアポニックス)でしたが、思い立ってから買い出しに行き、制作過程を終えて稼働すまでに2時間たらずでできました。
まだ収穫に至ってはいないし、思わぬトラブルも発生するかもしれませんが、土を耕したり、足したりする必要もなく、虫もつきにくいため、土耕栽培を素人がやるより気軽で簡単に始められるのが水耕栽培かなと実感しました。
常に水に浸かっているため暑い日でも水やりの心配もいりません。
ビオトープを利用すれば液肥の必要もなく効率的に養分を供給してくれます。もちろん、メダカに無害の液肥も多く、使うことはできます。メダカと野菜を一緒に育てられるので一度で二度おいしいってやつですね!
また、私はメダカを飼っているためアクアポニックスという方法を選びましたが、水産養殖を利用しない純粋な水耕栽培という方法もあります。
水耕栽培のメリットは家から外に出なくても、畑に行かなくても、土いじりしなくても、ペットボトルから手軽に始められることだと思います。「野菜を育てたいけど時間がない」という方、自宅で水耕栽培はいかがでしょうか。
つたない内容ではありますが、アクアポニックスや水耕栽培に興味のある方に少しでも役立っていただければ幸いです。
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